someone's diary

生活の記録。

スピッツのチェリーで"僕"はどこへ行くのか

桜は散ってしまった。もう木々は青く色を変えているし、この季節を感じられるのはあとどれくらいだろう。4月の間くらいはきっと春の匂いも残ってくれる。

 

四季の中で最も春が好きである。それは僕が生まれた月が3月末なのが関係しているのかもしれないし、ぽかぽかとあたたかい気象のせいかもしれないが、子供ができたら春に関する字を名前に使いたいくらい好きである。

 

春といえば、スピッツに『チェリー』という曲がある。

僕はスピッツの曲を聴き始めて9年目だ。殆ど全ての曲を聴いており、お気に入りの曲でプレイリストを作ったら全曲数の2/3ほどが入ってしまって殆ど意味がなくなったし、直筆のサインも持っている。恐らくかなりのスピッツ好きであると思う。

 

スピッツというと大体

チェリー
空も飛べるはず
ロビンソン

あたりしか聴いたことがないという人が多いので、好きな曲を聞かれたときに、ファンはこの3曲を敢えて入れなかったりする。

 

僕もさわって・変わって自転車魔法のコトバモリー夢追い虫ババロア…など、敢えてその3曲以外のお気に入りを友達に紹介していた。それ以外にも沢山良い曲あるんだよ!という気持ちだったのだ。

 

しかし、僕がスピッツを知ったきっかけはチェリーである。そして、やはり最も好きな曲もチェリーだ。

 

初めて聴いた時は脳みそが洗われるような衝撃を受けた。中学生の時期は所謂"音楽"というものを少しずつ聴き始めた頃だったが、一聴してどハマりした。

 

すぐにTSUTAYAに行き、シングルコレクションを2枚借りた。その日から毎日毎日繰り返し聴いた。中学2年生に進級したばかりの時期だった。

 

だから、僕の中で春の曲といえば『チェリー』である。これを聴きながら外を歩く以上に気持ち良いことなんかない。

 

この曲は一体どんな曲なのだろうか。草野さんの書く詩は大体が恋の歌だ。歌詞の意味を公に話すことはなく、聴き手がそれぞれに解釈してほしいという。

 

 

チェリーとは何を歌った曲か

チェリー

作詞作曲:草野マサムネ

君を忘れない

曲がりくねった道を行く

産まれたての太陽と

夢を渡る黄色い砂

最初から未練がたらたらだ。"君"とは別れた女性のことだろう。曲がりくねった道が、一体どこへ向かう道なのか。

 

"産まれたての太陽"はその女性のことなのではないか。"僕"にとって彼女は初めての、汚れのない光だった。いつでも、どこにいても、その存在を忘れることはなかった。

 

"夢を渡る黄色い砂"は、僕には砂時計を想起させた。関係が終わった後の時間の経過、もしくは"夢を渡る"なのだから付き合っていたときの時間を表しているのかもしれない。そして、砂時計はいつか必ず終わる。

 

 

二度と戻れない

くすぐり合って転げた日

きっと想像した以上に騒がしい未来が

僕を待ってる

"僕"は彼女と別れたばかりで相当に傷ついている。楽しかった日々を思い返しては頭を抱えている。

 

"僕"が彼女とこれからどういう関係になりたいのか。"想像した以上に騒がしい未来"に、彼女はいるのだろうか。

 

 

「愛してる」の響きだけで強くなれる気がしたよ

ささやかな喜びをつぶれるほど抱きしめて

"僕"は恐らく振られたのだろう。僕はこの台詞は、そんな傷ついた状態で"僕"が発した、弱さの告白であるように思える。「愛してる」と伝えたのがいつなのか分からないが、"気がしたよ"のところから分かるように、ここでも"僕"は過去を振り返り呟いている。

「未来はきっと僕を騒がしく包むだろう。けど、僕は彼女とそんな日々を送りたかった。愛の告白は僕を強くしてくれた気がしたけど、結局のところ僕は弱いままだ。」

そんなことをささやかな喜び、くすぐり合って転げたような彼女との何気ない日々を思いながら漏らすのである。

 

 

こぼれそうな思い

汚れた手で書き上げた

あの手紙はすぐにでも捨てて欲しいと言ったのに

汚れた手とは、"僕"が袖にされた理由を自覚しているということだろうか。あるいはその想像がついているか。しかし、彼女は"僕"から貰った手紙を捨てなかった。"僕"はそれで彼女に期待してしまったのかもしれない。

 

 

少しだけ眠い

冷たい水でこじあけて

今、せかされるように飛ばされるように

通り過ぎてく

"僕"は別に調子が良くもなく、眠いような気持ちで過ごしていたけど、何とか顔を洗って、何かに押されるように毎日を送っていく。きっと、"僕を待ってる"と思っていた未来がなかなか見えてこない不安が、"僕"を焦らせている。

 

 

「愛してる」の響きだけで強くなれる気がしたよ
いつかまたこの場所で君とめぐり会いたい

"僕"は彼女のことが本当に忘れられないのだろう。"この場所"とはどこだろう。特別な場所ではないような気がする。もっと普通で、日常的で、そしていつも一緒にいた場所だ。

 

 

どんなに歩いてもたどり着けない

心の雪で濡れた頬

悪魔のふりして切り裂いた歌を

春の風に舞う花びらに変えて

"僕"はなかなか"騒がしい未来"に辿り着けない。春なのに心の中は雪が降るかのように寂しく冷たい。"僕"は彼女への想いを断ち切るかのように彼女に捧げた歌を破り捨てていた。

 

でも、"僕"はそんな歌をまた春の風に乗せて歌おうとする。このあとに入るギターソロは弾むような、穏やかなような印象で、"僕"の心が1つの転機を迎えたことを示唆しているように思われた。

 

 

君を忘れない

曲がりくねった道を行く

きっと想像した以上に

騒がしい未来が僕を待ってる

"僕"はまだ彼女のことを想い続けている。

たとえそれが一本道ではなく、あちこちに曲がりくねった道だとしても、歩いても歩いても進んでいる気がしなくても、"僕"は"僕"を騒がしい未来が待ってると信じて進み続ける。そこに誰がいようとも、そこに彼女がいなくても。

 

 

「愛してる」の響きだけで強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びをつぶれるほど抱きしめて

過去に囚われていた前半部分とでは、このフレーズの意味が異なってくると思う。

 

「僕は愛していると伝えるだけで強くなれた気がした。最後まで続くことはなかったけれど、僕の中の彼女と過ごした思い出は、今でも抱きしめたくなるほど愛おしいものだ。」

 

そんな風に読めた。

 

 

ズルしても真面目にも生きてゆける気がしたよ

いつかまたこの場所で君とめぐりあいたい

"僕"はこの後入り組んだ道をどんな風にも生きていけるだろう。その先で、たとえ恋人という関係ではないにしても、また彼女と会えたら、"僕"はその道の途中で出会ったものや見つけたことの話をするだろう。こうして"僕"は新しい一歩を踏み出す。

 

 

 

 

 

草野さんはなぜチェリーという曲名なのかと尋ねられて『チェリーボーイだから』と答えていた。ふざけて答えたのかも知れないけど、そんな初心な恋の終わりと再生を歌った曲がチェリーなのかも知れないと思った。

 

 

※ 今週のお題 「わたしの春うた」

 

CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection

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